Barthélemy d'Eyck T-shirt

バーテルミー・デックは、15世紀中頃にフランス南部で活躍したフランドル系の画家・写本装飾家です。
ルネ・ダンジュー王の宮廷で宗教画や豪華写本を手がけ、夜明けや夕暮れの光をリアルに捉えたドラマチックな陰影表現が高く評価されました。
フランドル由来の細密描写にフランス的な柔らかさを掛け合わせたその作風は独特で、影の扱いに秀でていたことから後世に「影の名手」とも呼ばれています。

『トーナメントの書（King René’s Tournament Book）』は、
15世紀フランスで制作された騎士試合の手引き書。
ルネ・ダンジュー王のもとで生まれた
儀礼と装飾の美学が詰まっている。

描かれているのは、象徴的な一騎討ち。
ブルターニュ公とブルボン公が、馬上で対峙する。

向かって左、ブルターニュ公のローブを飾るのは、白貂（エルミン）の毛皮。
純潔と高貴の象徴とされるこのモチーフが、領主の品格を語る。

対して右のブルボン公は、青のローブに百合の紋章（フルール・ド・リス）を重ねる。
王家に連なる誇りが、その衣に織り込まれている。

武器を交えることが目的ではない。
装いと構えによって、存在を証す場だった。